仕訳のやり方を初心者向けに解説|借方・貸方と勘定科目を具体例でわかりやすく

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「借方(かりかた)と貸方(かしかた)って、結局どっちに何を書けばいいの?」

個人事業主や副業を始めて帳簿を付けようとすると、多くの人が最初につまずくのが「仕訳(しわけ)」です。言葉は難しそうですが、考え方の入口はシンプルで、多くの取引は「何に使った?」「どうやって払った?」という2つの質問から組み立てられます。

この記事では、簿記や経理が初めての人向けに、仕訳の基本的な考え方を具体例から解説します。文房具を現金で買った場面のような身近な例から始めて、銀行振込、クレジットカード、個人のお金で立て替えた場合など、個人事業主によくある取引の仕訳例まで紹介します。

この記事で分かることは、次のとおりです。

  • 仕訳とは何か、なぜ記録が必要なのか
  • 借方・貸方を具体例から考える方法
  • よく使う勘定科目の意味
  • 個人事業主によくある取引の仕訳例
  • 初心者が間違えやすいポイント






仕訳とは?取引を「借方」と「貸方」に分けて記録すること

仕訳とは、仕事で起きた取引を帳簿に記録するときに、「何が増えたか・減ったか」を整理して、勘定科目と金額を左右に分けて書く方法のことです。

左側を「借方」、右側を「貸方」といいます。たとえば「文房具を現金で買った」という1つの取引でも、「文房具という経費が増えた」面と、「現金が減った」面の2つがあります。この2つの面を分けて記録するのが仕訳の基本です。

なぜ、このような記録が必要なのでしょうか。国税庁は、1年間の所得金額を正しく計算して申告するために、収入金額や必要経費に関する日々の取引を記帳し、書類を保存しておく必要があると案内しています。記帳するときは、取引の年月日、相手方の名称、金額などを帳簿に記載します。

仕訳は、その記帳を正確に行うための基本の形です。なお、帳簿に何を記録し、書類をどう保存するかについては、次の記事で詳しく解説しています。

💡 Meltiny編集部のワンポイント

仕訳と聞くと難しく感じますが、最初は「お金の出入りを、理由とセットで記録する方法」と考えると分かりやすいですよ。

借方・貸方は「何に使った?」「どう払った?」から考える

借方と貸方の覚え方に悩んだら、まずは経費を支払った場面で、次の2つを自問してみてください。

  • 何に使った?(=経費の内容)
  • どうやって払った?(=現金、預金などの支払い手段)

例として、仕事用の文房具を現金1,000円で購入した場面で考えてみましょう。「何に使った?」の答えは文房具で、経費の勘定科目では「消耗品費」になります。「どうやって払った?」の答えは現金です。

借方金額貸方金額
消耗品費1,000円現金1,000円

このように、経費を支払った取引では、「何に使ったか」を表す経費が借方に、「何で払ったか」を表す現金や預金などが貸方に来るケースが多くあります。まずこの形を入口として覚えると、日常の経費の仕訳で迷いにくくなります。

ただし万能ルールではありません|売上が発生したときの仕訳

注意したいのは、「何に使った?どう払った?」は、経費の支払いを理解するための入口であって、すべての仕訳に当てはまる万能ルールではないことです。

たとえば、仕事を完了して10万円の売上が発生したものの、入金は翌月という場面を考えてみましょう。この取引では、何かにお金を使ったわけでも、その場で何かで払ったわけでもありません。

借方金額貸方金額
売掛金100,000円売上100,000円

「売掛金」とは、商品やサービスを提供したあと、まだ受け取っていない代金を管理するための勘定科目です。この例では、「売上という収益が増えた」ので貸方に売上が、「後から受け取る権利(資産)が増えた」ので借方に売掛金が来ます。

このように仕訳の土台にあるのは、勘定科目の増減のルールです。グループごとに、増えるときに借方・貸方のどちらに書くかが決まっています。

グループ例増えるとき減るとき
資産現金、普通預金、売掛金借方貸方
負債未払金、買掛金貸方借方
純資産元入金など貸方借方
収益売上貸方借方
費用消耗品費、通信費借方貸方

最初からこの表を暗記する必要はありません。「経費の支払いは入口の考え方で組み立てる」「当てはまらない取引は増減のルールで考える」という順番で慣れていくと、仕訳の全体像がつかみやすくなります。

売掛金の発生から入金までの流れを詳しく知りたい場合は、次の記事も参考にしてください。

勘定科目とは?仕訳で使う「名前」のこと

勘定科目とは、取引の内容を分類するための名前のことです。「現金」「売上」「消耗品費」のように、お金の種類や理由ごとに名前を付けて記録することで、後から「何にいくら使ったか」を集計できるようになります。

この記事の仕訳例で使う勘定科目は、次のとおりです。まずはこの範囲を押さえれば、日常の取引の多くに対応できます。

  • 現金:手元にあるお金
  • 普通預金:事業で使っている銀行口座のお金
  • 売掛金:サービス提供後にまだ受け取っていない代金
  • 未払金:クレジットカードの利用分など、後日支払うことが決まっているお金(仕入代金の未払いに使う「買掛金」とは区別されます)
  • 売上:商品やサービスの提供で得た収益
  • 消耗品費:文房具や備品など、仕事で使う消耗品の費用
  • 通信費:インターネット料金やサーバー代などの費用
  • 新聞図書費:仕事に必要な書籍や資料の費用
  • 事業主借(じぎょうぬしかり):事業の経費を個人のお金で立て替えたときに使う、個人事業主専用の勘定科目
  • 事業主貸(じぎょうぬしかし):事業のお金を生活費など私用に使ったときに使う、個人事業主専用の勘定科目

勘定科目は丸暗記するものではなく、「この取引はどんな内容か」で選ぶものです。同じ支払いでも、仕事の内容によって適切な科目が変わる場合があります。

仕訳の進め方|3つのステップ

実際に仕訳を考えるときは、次の3ステップで進めると整理しやすくなります。

  1. 取引の内容を確認する:何が起きたのか(買った、売れた、入金された等)と、金額を確認します
  2. 勘定科目を選ぶ:取引の内容に合う科目を、借方・貸方のそれぞれについて選びます
  3. 金額と左右を確認する:増減のルールに照らして、借方と貸方の金額が一致しているか確認します

仕訳の実例|個人事業主によくある取引

ここからは、個人事業主や副業でよくある取引を例に、仕訳の形を見ていきます。なお、金額はすべて理解のための例です。また、消費税の処理は省略した簡略例として紹介します。実際の処理は、消費税の経理方式や取引内容によって変わる場合があるため、迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

例1:銀行振込でインターネット料金を払った

事業で使っているインターネット料金5,500円を、事業用の銀行口座から振り込んで支払った場合です。「何に使った?」は通信費、「どう払った?」は普通預金なので、現金払いの例と同じ考え方で組み立てられます。

借方金額貸方金額
通信費5,500円普通預金5,500円

例2:事業用クレジットカードで備品を買った

事業用クレジットカードで仕事用の備品8,000円を購入した場合、購入した時点では現金も預金も減っていません。カードの利用分は「後で支払うお金」なので、貸方は未払金になります。

借方金額貸方金額
消耗品費8,000円未払金8,000円

そして、カードの引き落とし日に銀行口座から8,000円が引き落とされた時点で、未払金が減ったことを記録します。

借方金額貸方金額
未払金8,000円普通預金8,000円

カード払いは「購入したとき」と「引き落とされたとき」の2段階で記録する点が、現金払いとの違いです。

例3:個人のお金で仕事の書籍を立て替えた

仕事に必要な書籍3,000円を、個人の現金で支払った場合です。事業のお金は動いていないため、貸方に現金や普通預金は来ません。このような「事業の経費を個人が立て替えた」状態を表すのが事業主借です。

借方金額貸方金額
新聞図書費3,000円事業主借3,000円

副業や個人事業では、個人のお金と事業のお金が混ざりやすいため、事業主借は実務でよく登場する勘定科目です。

例4:売上が発生したが、入金はまだのとき

前半で紹介したとおり、売上が発生して代金を後から受け取る場合は、借方に売掛金、貸方に売上を記録します。

借方金額貸方金額
売掛金100,000円売上100,000円

なお、売上をいつ計上するかは、商品やサービスを提供したタイミングなど取引の内容によって判断します。「請求書を発行した日がそのまま計上日になる」と機械的に決まるわけではありません。

例5:売掛金が入金されたとき

例4の売掛金10万円が、事業用の銀行口座に入金された場合です。今度は「売掛金という資産が減って、普通預金という資産が増えた」取引になります。

借方金額貸方金額
普通預金100,000円売掛金100,000円

例4と例5をセットで見ると、「売上の発生」と「実際のお金の移動」は別の時点で起きることが分かります。この時間差を分けて記録できるのが、仕訳で管理する良さです。

例6:事業のお金を生活費に使った

事業用の銀行口座から、生活費として30,000円を引き出した場合です。これは事業の経費ではないため、消耗品費などの経費科目にはなりません。事業のお金を私用に使ったことを表す事業主貸を使います。

借方金額貸方金額
事業主貸30,000円普通預金30,000円

例3の事業主借と例6の事業主貸は、個人と事業の間のお金の出入りを表すペアの科目です。この2つを理解しておくと、副業でよくある「混ざったお金」の整理がしやすくなります。

💡 Meltiny編集部のワンポイント

仕訳例は「暗記するもの」ではなく、「自分の取引を当てはめるための型」です。取引が起きたら、まず「何が起きたか」を言葉にしてから、近い例を探してみましょう。







初心者が間違えやすいポイント

「経費になるか」と「どう仕訳するか」を混同する

「この支出は経費になるか」は税務上の判断、「どう仕訳するか」は記帳の方法で、別の問題です。経費になるかどうか迷う支出も、記録自体は取引の内容に沿って行います。経費の判断に迷う場合は、仕訳の前に、支出が事業に必要だったかを整理しておきましょう。

カード払いを現金払いと同じに扱う

クレジットカードで支払った場合、購入した時点では現金も預金も減っていません。例2のように、購入時は未払金、引き落とし時に預金の減少、と2段階で記録するのが基本です。「カードで払ったから、その場で預金が減った」としてしまうのはよくある間違いです。

私用と事業用を混ぜたままにする

個人のお金で経費を立て替えたら事業主借、事業のお金を私用に使ったら事業主貸、というように、混ざった取引こそ科目で区別して記録することが大切です。また、自宅の家賃や通信費のように仕事と私用の両方で使う費用は、事業で使った部分を分ける「家事按分」の考え方が関係します。

勘定科目を丸暗記しようとする

勘定科目の本を最初から覚えようとすると挫折しがちです。まずは自分の事業でよく出る取引から、使う科目は自然と限られてきます。「取引の内容を確認する→科目を選ぶ→左右と金額を確認する」という進め方を繰り返すほうが、結果的に身につきやすくなります。

会計ソフトを使うと仕訳はどう変わる?

会計ソフトを使うと、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んだり、取り込んだ内容から勘定科目の候補を提示したりと、仕訳の入力を助けてくれる機能があります。繰り返し発生する取引にあらかじめ処理方法を決めておく「仕訳ルール」のような機能を用意しているサービスもあります。

ただし、ソフトが助けてくれるのは入力や記録の作業です。「この支出は事業のものか」「どの勘定科目が合っているか」といった取引内容の確認までは自動になりません。自動で登録された仕訳も、内容が実際の取引と合っているかを確認する習慣は必要です。

会計ソフトまわりの仕組みは、次の記事でも解説しています。

仕訳についてよくある質問

借方と貸方はどうやって覚えればいいですか?

まずは経費の支払いで「何に使った?(借方)」「どう払った?(貸方)」と考える形に慣れるのがおすすめです。そのうえで、当てはまらない取引では「資産・費用は増えると借方、負債・収益は増えると貸方」という増減のルールで確認しましょう。丸暗記よりも、具体例に当てはめる練習のほうが身につきやすくなります。

仕訳が分からなくても確定申告はできますか?

確定申告では、所得金額を正しく計算するための記帳が前提になります。国税庁は、白色申告でも記帳や帳簿等の保存の制度を案内しており、取引の年月日、相手方の名称、金額などを記載することとされています。一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するような簡易な方法でもよいとされています。

青色申告では、正規の簿記による記帳が原則とされていますが、現金出納帳や売掛帳などの帳簿を備え付けた簡易な記帳でもよいとされています。なお、青色申告特別控除の額は記帳の方法によって変わります。白色申告と青色申告の違いは、次の記事で解説しています。

個人のお金で経費を払った場合はどう記録しますか?

事業の経費を個人のお金で立て替えた場合は、貸方に事業主借を使います(例3参照)。事業のお金と個人のお金を区別して記録しておくことで、後から帳簿を確認したときに「なぜこの経費の支払い元が事業の口座にないのか」が説明できるようになります。

会計ソフトを使えば仕訳を覚えなくても大丈夫ですか?

会計ソフトは明細の取り込みや科目の候補提示で入力を助けてくれますが、登録された内容が実際の取引と合っているかの確認は利用者側で行う必要があります。仕訳の基本的な考え方を知っておくと、自動登録された内容が正しいかどうかを判断しやすくなります。

Meltiny編集部の結論

仕訳は、簿記の専門用語を暗記する作業ではありません。取引の内容を確認し、「何が増えて、何が減ったか」を借方と貸方に分けて記録する、という考え方の積み重ねです。

経費の支払いは「何に使った?」「どう払った?」から考えると入りやすく、売上のように当てはまらない取引では、勘定科目の増減ルールに立ち返る。この2段構えで考えると、初心者でも自分の取引を一つずつ仕訳できるようになります。

まずは自分の事業でよくある取引から、近い仕訳例に当てはめて記録してみましょう。取引が増えて手入力が負担になってきたら、会計ソフトの自動連携や仕訳ルールの活用も検討してみてください。







まとめ

  • 仕訳は、取引を借方と貸方に分けて記録する方法
  • 経費の支払いは「何に使った?」「どう払った?」から考えると分かりやすい
  • ただし万能ルールではなく、売上のような取引は勘定科目の増減ルールで考える
  • カード払いは購入時(未払金)と引き落とし時の2段階で記録する
  • 個人と事業のお金が混ざる取引は、事業主借・事業主貸で区別する
  • 会計ソフトを使っても、登録内容が実際の取引と合っているかの確認は必要

仕訳に慣れてきたら、帳簿の付け方や売掛金の管理についてもあわせて確認しておくと、確定申告に向けた記帳の流れがつかみやすくなります。

参考にした公的情報

※この記事は2026年10月時点で確認した国税庁の情報をもとに作成しています。税制や記帳・保存に関する制度は変更される場合があるため、実際の記帳・保存・申告では国税庁の最新情報をご確認ください。また、この記事の仕訳例は一般的な考え方を初心者向けに簡略化したもので、実際の会計処理は取引内容や消費税の処理方法などによって異なる場合があります。自分のケースで判断に迷う場合は、税務署や税理士などに確認しましょう。

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